
「女性だから、この仕事は負担かもしれない」
「若い人は、責任のある仕事をしたくないだろう」
「年上の部下は、新しいやり方に抵抗があるだろう」
私たちは日々、これまでの経験や常識をもとに、相手の気持ちや行動を予測しています。
その判断が役に立つこともありますが、ときには、目の前の本人を見えにくくすることがあります。
自分では気づきにくい、無意識の思い込みや決めつけ。
それが「アンコンシャス・バイアス」です。
アンコンシャス・バイアスは、誰にでもある
アンコンシャス・バイアスという言葉を聞くと、「偏見を持ってはいけない」「自分の考えを否定される」と感じる方もいるかもしれません。
けれど、無意識の思い込みを一つも持たずに人を見ることは、簡単ではありません。
これまでの経験から、「きっとこうだろう」と考えることは誰にでもあります。
問題は、思い込みを持つことそのものよりも、自分の判断が事実だと思い込み、確認しないまま相手への対応を決めてしまうことです。
よかれと思った配慮が、機会を奪うこともある
たとえば、小さな子どもがいる部下に対して、「家庭との両立が大変だろうから」と出張や責任のある仕事を頼まない。
本人を気遣った判断かもしれません。
しかし本人は、その仕事に挑戦したいと思っている可能性もあります。
反対に、「平等に扱わなければ」と、本人の事情を聞かずに同じ負担を求めることも、適切とは限りません。
管理職だけで答えを決めるのではなく、まず本人に希望や状況を確認する。
配慮することと、本人の選択肢を先に狭めることは違います。
女性活躍推進に、私が感じていた違和感
私は会社員時代、管理職試験を受けないかと打診されたことがあります。
けれど、その頃は社内で「女性管理職を増やそう」という動きが強くなっていました。
そのため私は、素直に「評価してもらえた」と受け取ることができませんでした。
「女性だから声をかけられたのではないか」
「実力以上の下駄を履かされているのではないか」
そんなモヤモヤがあり、管理職の打診に乗れなかった時期があります。
女性の活躍を後押しする制度や取り組みは必要です。
一方で、伝え方によっては、本人に「女性だから選ばれた」という感覚を持たせてしまうことがあります。
本来は、それまでの仕事や能力、期待している役割を具体的に伝える必要があったのだと思います。
リーダーらしさにも、思い込みがある
私は「女性リーダーを育成する研修」に参加したこともあります。
その中で印象に残っているのは、声のトーンを低くすることや、いわゆる“キャピキャピした話し方”をしないことでした。
もちろん、伝え方や声の出し方を学ぶことには意味があります。
ただ、当時の私は、「女性がリーダーとして認められるためには、従来の男性管理職のように振る舞わなければならないのだろうか」と感じました。
声が低い。迷いを見せない。強く話す。即断即決する。
それだけがリーダーらしさではありません。
話を聞くこと、周囲の力を引き出すこと、必要なときに助けを求めることも、組織を動かすために必要な力です。
職場にある、さまざまな思い込み
アンコンシャス・バイアスは、性別に関するものだけではありません。
- 若い人は、責任を負いたくない
- 年上の社員は、デジタルが苦手
- 子育て中の人は、重要な仕事を望んでいない
- おとなしい人は、やる気がない
- 仕事が速い人には、さらに仕事を任せても大丈夫
- 管理職は、弱音を見せてはいけない
中には、過去の経験から生まれた考えもあるでしょう。
だからこそ、「これは事実なのか。それとも自分の解釈なのか」と、一度立ち止まることが大切です。
思い込みに気づくためにできること
アンコンシャス・バイアスを完全になくそうとすると、何も判断できなくなってしまいます。
まずは、自分の判断を絶対視せず、必要なときに修正できる状態をつくることです。
- 事実と、自分の解釈を分けて考える
- 本人に確認する前に、希望を決めつけない
- 仕事を任せる基準や評価基準を明確にする
- いつも同じ人に仕事や機会が偏っていないか振り返る
- 自分とは違う立場の人の意見を聞く
自分一人で振り返っても気づきにくいときは、利害関係のない相手に話してみる方法もあります。
話しているうちに、「私はこう思い込んでいたのかもしれない」と見えてくることがあります。
大切なのは、気づいたあとに修正すること
無意識の思い込みに気づくことは、自分を責めることではありません。
「もしかしたら、決めつけていたかもしれない」
そう気づいたときに、本人に聞き直したり、仕事の任せ方を変えたり、評価の基準を見直したりする。
管理職に必要なのは、最初から間違えないことではなく、気づいたときに考え直せることではないでしょうか。
一人では気づきにくい考えを整理するために
壁打ち戦略会議では、部下との関わり方や組織の課題、自分自身の仕事やキャリアについてお話を伺います。
誰かに答えを決めてもらう時間ではありません。
話しながら、自分が何を見て、どう判断しているのかを整理し、次に試すことを考える時間です。










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