
会社員時代、尊敬していた上司がいました。
論理的で、的確で、決断力がある。フィーリングとパッションで語りがちな私は、いつも「ごもっともです!」と感服していました。
でも、その上司との会話で思い出すのは、仕事の話ばかりではありません。
仕事以外の話にも、引き出しがある人
長期休暇の前に、私が「インドへ行ってきます!」と言うと、
「おう! チャクラを解放してこい!」
スリランカへ行くと話せば、紅茶の好みが返ってくる。
「そろそろ良い包丁が欲しいんです」と言えば、おすすめの問屋や銘柄を教えてくれるし、歌舞伎に興味があると話せば、そこにも詳しい。
とにかく、話題の引き出しが多い人でした。
一緒に飲みに行っても、話が面白くて勉強になるので、普段はあまり仕事の話をしませんでした。
そんなある日、難しい仕事がなかなかうまくいかず、つい弱音をこぼしたことがあります。
「お前にもできる」
「なんでもできてすごいですよね。私にはそんな能力ありません」
そう言った私に、上司はこう返しました。
人間の能力に差はほとんどない。やろうと思うか、思わないかの差。できると思うか、思わないかの差。お前にもできる。
もちろん、得意なことも、経験も、置かれている状況も、人それぞれ違います。やろうと思えば何でもできる、とまでは今も思いません。
それでも、私が自分で「私には無理」と線を引いていたところに、「お前にもできる」と言ってくれた。
その言葉は、会社を離れた今も思い出します。
「すごいなあ」と誰かを眺めているだけでは、何も変わらない。
自分にもできることがあるかもしれない。まずは少しやってみよう。
そう思うきっかけをくれた言葉でした。
好きなことを話すと、つながることがある
今は、会社の人にプライベートを話したくない、という方もいると思います。
もちろん、私も全部を話していたわけではありません。話したくないことは話さないし、話したくない相手に無理に話す必要もありません。
ただ、自分の好きなことを話していたおかげで、情報やお誘いが集まってくることは、よくありました。
「阪神ファンなんです!」と言っていたら、余ったチケットを譲ってもらったり、観戦に誘ってもらったり。
「玉置浩二のファンなんです!」と話していたら、こちらも余ったチケットをいただいたことがありました。
好きだと伝えていなかったら、きっと私には回ってこなかったお話です。ありがたい。笑
私は、職場の人は敵ではないと思っています。
仕事で意見が合わないことや、立場の違いはあっても、好きなものの話でつながれることもある。仕事の話だけでは見えなかった、その人の一面に出会うこともあります。
あの上司とのやり取りも、私が旅や興味のあることを話していたからこそ、生まれた会話でした。
全部を見せなくてもいい。
自分が話してもいいと思えることを、少しだけ。
そこから広がる関係や、巡ってくる楽しみもあるのだと思います。
「頑張るんじゃなくて、めいっぱい楽しめ」
退職するとき、その上司に伝えました。
「ありがとうございました! 頑張ります!」
返ってきたのは、
「頑張るんじゃなくて、めいっぱい楽しめ!」
という言葉でした。
「お前にもできる」と言ってくれた人が、最後には「楽しめ」と送り出してくれた。
この言葉に、今も救われています。
仕事をしていると、自分に足りないものや、できていないことに目が向く日もあります。
そんなときに思い出せる言葉があること。
自分とは違う見方をしてくれる人がいること。
私にとって、あの上司との出会いは、会社員時代にもらった大切なものの一つです。
働くことや、これからのことを話してみたい方へ
「私には無理」と思っていること。
職場では話しにくいこと。
この先、どう働いていきたいのか。
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最終更新日:2026年10月15日 (投稿者:nana)










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